ショパン スケルツォの楽曲一覧
ショパンのスケルツォは1831年~1842年に作曲、全4曲の楽曲が残されています。
スケルツォとはイタリア語で「冗談」「洒落」という意味を持ち、このタイトルを冠した楽曲は「短い構成で」「軽妙な雰囲気」「リズム・ハーモニーに面白みが見られる」といった独特な個性を持ちます。
しかし、ショパンのスケルツォは従来のスケルツォとは対照的で、悲劇・憤怒の感情を激情的に押し出すスタイルで曲の世界を描いています。演奏時間が長く、スケールが大きい点も特徴的です。
ショパンの盟友であるリストも「ショパンのスケルツォには激しい怒りや絶望が示されており、これらは辛辣な皮肉、頑固な自尊として表現されうる」と述べています。
曲名 | 調性 | 作品番号 | 難易度 |
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スケルツォ 第1番 | ロ短調 | Op.20 | 8(上級) |
スケルツォ 第2番 | 変ロ短調 | Op.31 | 7(上級) |
スケルツォ 第3番 | 嬰ハ短調 | Op.39 | 8(上級) |
スケルツォ 第4番 | ホ長調 | Op.54 | 8(上級) |
※難易度は「G.Henle」の評価を参考にしています。
ショパン スケルツォの難易度・解説
スケルツォは4曲すべてが「7~8の上級」ランクに属しており、これらはショパンの作品の中でも特に高難度の楽曲に分類されています。
どの曲にも流麗で急速なパッセージが散りばめられ、これらを澱みなく響かせる技術、終焉のコーダを華麗に弾きこなす力強さ、楽節の対比バランスなど総合的に高い技術が求められます。
スケルツォ 第1番 Op.20
スケルツォ第1番は1831年に作曲、アルブレヒトに献呈
冒頭に鳴り響く強烈な2つの不協和音は、後に続く主題に悲観的または否定的な感情が込められることを予兆させます。疾風のように駆け抜ける激烈な主題は、予見した通り焦燥感と闘争心で満ちており、副主題にはやや軽快さが加わりますが、否定的な感情が残ります。
しかし中間部は全くの別世界に誘われ、抒情的で幸福に満ちた夢の世界が広がります。この束の間の幻想は、再度現れる不協和音にて破られ、強い感情を込めた主題を再現して、激烈なコーダで曲は終焉を迎えます。
ショパンがこの楽曲を手掛けた1831年は、エチュードの「革命」が完成した年でもあり、母国ポーランドにおける闘争に対する苦悩の念が強く渦巻き。この時抱いた否定的な感情がこの曲に込めらたと推測されます。
調性 | ロ短調 |
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拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 8:30~10:30 |
難易度 | 8(上級) |
スケルツォ 第2番 Op.31
スケルツォ第2番は1837年に作曲、アデール・ドゥ・フェルステンシステイン伯爵令嬢に献呈、3部形式に近い、自由なソナタ形式で書かれています。
囁くような短音と、それを突き返すような過激な和音の打鍵、
この冒頭のやり取りが、悲劇的なストーリーの展開を想像させます。
冒頭の主題に続く第2の主題は、優雅さと気品に溢れており流麗で滑らかな旋律が響き渡ります。主題を幾度と反復し、中間部は適度な緊迫感を持ち温かい旋律が鳴り響きます。主題を再現した後、輝かしいコーダが繰り広げられ華麗に曲を締めくくります。
シューマンはこの作品を高く評価しており、「優美さ、大胆さ、愛と憎しみに充たされている点から、バイロンの詩に比すべき作品である」と言葉を残しています。
調性 | 変ロ短調 |
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拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 9:40~10:40 |
難易度 | 7(上級) |
スケルツォ 第3番 Op.39
1839年に作曲、アドルフグートマンに献呈、展開部を除いた自由なソナタ形式で書かれています。
曲は荒々しく不安定な感情を込めた序奏と第1主題が鳴り響き、劇的な展開を見せると思いきや、平穏で温もりのある第2主題に移行します。コラール風に響くハーモニーにアルペジオで下降する流麗な旋律が、情景をより神々しく輝かせます。再現部は転調を加えながら2つの主題を反復し、情熱的で迫力に満ちたドラマティックなコーダで、全てを解放するかのように曲を閉じます。
調性 | 嬰ハ短調 |
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拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 6:40~8:00 |
難易度 | 8(上級) |
スケルツォ 第4番 Op.54
スケルツォ第4番は1842年に作曲、ジャンヌ・ドゥ・カラマン嬢に献呈
4つのスケルツォの中で最もスケールが大きく、明るく軽快な曲調。怒りや闘争を連想させる負の感情表現が微塵も感じられない点が、他の3つのスケルツォと比べて異質に見えます。
ソナタ形式と3部形式が混合した、自由な構成を取っており、第1主題はおおらかで甘い旋律がゆっくりと歌われます。第2主題は爽快さを備えややリズミカルな印象、中間部は主題の美しさを超えて、ただただ甘美さを追求するような抒情の情景を映し出します。そして形を変えた主題を再現した後、情熱を込めた技巧的なコーダで曲を閉じます。
調性 | ホ長調 |
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拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 9:10~12:00 |
難易度 | 8(上級) |
- 2024年9月3日、記事内容を更新