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スクリャービン 12のエチュードOp.8の難易度・解説

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スクリャービン 12のエチュード Op.8の楽曲一覧

スクリャービンは生涯に26曲のエチュードを作曲しています。
その中でも1894~1895年に作曲された「12のエチュード Op.8」はスクリャービンが22~23歳の時に書き上げた楽曲、このエチュードはスクリャービンの初期の作品にあたり、曲の特徴としてショパンの音楽性が強く反映されています。スクリャービンの後期作品に見られる神秘主義的な曲想は薄く、若き日のロマンティシズムへの芸術性がはっきりと感じ取れる作品です。

曲名 調性 作品番号 難易度
エチュード 第1番 嬰ハ長調 Op.8-1 7(上級)
エチュード 第2番 嬰ヘ短調 Op.8-2 6(中級)
エチュード 第3番 ロ短調 Op.8-3 8(上級)
エチュード 第4番 ロ長調 Op.8-4 7(上級)
エチュード 第5番 ホ長調 Op.8-5 7(上級)
エチュード 第6番 イ長調 Op.8-6 8(上級)
エチュード 第7番 変ロ長調 Op.8-7 7(上級)
エチュード 第8番 変イ長調 Op.8-8 6(中級)
エチュード 第9番 嬰ハ短調 Op.8-9 9(上級)
エチュード 第10番 変ニ長調 Op.8-10 9(上級)
エチュード 第11番 変ロ短調 Op.8-11 6(中級)
エチュード 第12番「悲愴」 嬰ニ短調 Op.8-12 8(上級)

※難易度は「G.Henle」の評価を参考にしています。



スクリャービン 12のエチュード Op.8の難易度・解説

スクリャービン「12のエチュードOp.8」の演奏難易度は「6(中級)~9(上級)」に分類されます。
ショパンを彷彿させるような旋律美を活かした作品が多く、軽く柔らかいタッチと絶妙なペダリングの技術が求められます。
人気曲の「エチュードOp.8-12(悲愴)」は「8(上級)」に属しており、オクターブによる激しい右手の動きと、飛躍する左手の伴奏を的確に制御する技術が必要とされます。

エチュード 第1番 Op.8-1

アレグロ、4/4拍子
冒頭から絶え間なく続く3連符の音型が特徴的、主部は練習曲風に旋律を奏でます。
中間部は3連符を低音に委ね、感傷的で煌びやかな旋律を歌い上げます。主部を再現した後はショパンの曲を連想させる流麗なコーダで曲を締めくくります。

調性 嬰ハ長調
拍子 4/4拍子
演奏時間 1:40~2:00
難易度 7(上級)

エチュード 第2番 Op.8-2

カプチッツィオ・コン・フォルツァ、4/4拍子
情緒溢れる旋律の中にやや憂いだ心情が感じ取れます。
中盤、右手の滑らかなメロディの傍ら、左手が押し迫る波のような激しい低音を響かせます。

調性 嬰ヘ短調
拍子 4/4拍子
演奏時間 1:30~1:50
難易度 6(中級)

エチュード 第3番 Op.8-3

テンペストーゾ、6/8拍子
オクターブによる音型が印象的、唸るように鳴り響く旋律と飛躍的な伴奏が特徴です。
激しい主部とは対照的に中間部は、光が注ぐような慈愛に満ちた情景を映し出します。

調性 ロ短調
拍子 6/8拍子
演奏時間 1:50~2:30
難易度 8(上級)

エチュード 第4番 Op.8-4

ピアチェーヴォレ、4/4拍子
上下に揺れ動く16分音符の旋律からは、晴れ晴れとした田園風景が思い浮かびます。
中間部の音型は8分音符・4分音符を交え緩急をつけながら、明るくのびのびと歌い上げます。

調性 ロ長調
拍子 4/4拍子
演奏時間 1:30~2:10
難易度 7(上級)

エチュード 第5番 Op.8-5

ブリオーソ、4/4拍子
冒頭から、うっとりするような甘美な旋律が鳴り響きます。
このメロディを引き立てるオクターブの響きは、低音部に移りドラマティックな展開を見せます。
再現部の旋律は、冒頭よりも小刻みな音型で終局に向かいます。

調性 ホ長調
拍子 4/4拍子
演奏時間 2:10~2:50
難易度 7(上級)

エチュード 第6番 Op.8-6

コン・グラツィア、3/4拍子
6度の音型で駆け巡る華やかな旋律が印象的、
この音型は終始保ち続け、幅広く跳躍する伴奏と共に、煌びやかな世界を演出します。

調性 イ長調
拍子 3/4拍子
演奏時間 1:50~2:30
難易度 8(上級)

エチュード 第7番 Op.8-7

プレスト・テネブローソ・アジタート、4/4拍子
目まぐるしく動く左手に反して、右手の音色は休符を挟みながら鋭くリズミカルに奏でられます。
中間部はオクターブの伴奏と共に、深みある和音を重厚に響かせます。

調性 変ロ長調
拍子 4/4拍子
演奏時間 1:50~2:20
難易度 7(上級)

エチュード 第8番 Op.8-8

レント(テンポ・ルバート)、3/4拍子
抒情的に鳴り響く和声の中に、どこか切なく沈鬱な雰囲気が漂います。
中間部では悲痛の思いを強く訴え、再現部はメロディを3連符・16分音符で緊密に仕立て、繊細で静かな終曲を描きます。
この曲は、スクリャービンの初恋の相手ナタリア・セケリーナのために書かれた作品と伝えられています。

調性 変イ長調
拍子 3/4拍子
演奏時間 3:10~3:50
難易度 6(中級)

エチュード 第9番 Op.8-9

アッラ・バッラータ、4/4拍子
激しく揺れ動くオクターブによる練習曲、スクリャービンの練習曲の中でも最も難易度の高い作品です。
主部は差し迫る炎のように威圧的で鬼気迫る世界観が展開されます。
緊迫した主部は劇的なクライマックスで一旦落ち着きを見せ、中間部は晴れ間がさすような温かく包容力を持った楽想が奏でられます。短い再現部の後、下降・上行音型の豪快なオクターブを経て、最後はp(ピアノ)⇒pp(ピアニッシモ)⇒ppp(ピアニッシッシモ)⇒pppp(ピアニッシッシッシモ)と、ゆっくりと力尽きるように終焉を迎えます。

調性 嬰ハ短調
拍子 4/4拍子
演奏時間 4:30~5:10
難易度 9(上級)

エチュード 第10番 Op.8-10

アレグロ、3/8拍子
冒頭からスタッカートを交えた妖艶なメロディが鳴り響きます。
目まぐるしく変化する伴奏が印象的、急速な動作に加え、幅広い跳躍、sf(スフォルツァンド)の打鍵など、曲全体を通して高度なテクニックが求められます。

調性 変ニ長調
拍子 3/8拍子
演奏時間 1:50~2:20
難易度 9(上級)

エチュード 第11番 Op.8-11

アンダンテ・カンタービレ、3/4拍子
淡々と刻まれる和音の伴奏の上に、メランコリックで物静かな旋律が歌われます。
中盤以降、伴奏は連符を交えた不規則な音型に変わり、この伴奏の揺らぎがより空虚で陰鬱な世界観を演出します。

調性 変ロ短調
拍子 3/4拍子
演奏時間 3:30~4:30
難易度 6(中級)

エチュード 第12番 Op.8-12「悲愴」

パテーティコ、4/4拍子
「悲愴」の名が付けられたドラマティックで壮烈な練習曲、
オクターブで駆け上がる旋律は高々と響き、主部の中で形を変えたびたび反復されます。
激しく揺れ動く分散和音の伴奏は絶え間なく続き、再現部では連続する和音の音型に姿を変えます。
厚みを増した伴奏は、冒頭の旋律と共に壮大なクライマックスに突入し、最後はfff(フォルティッシッシモ)による強烈な轟音で終止符が打たれます。

調性 嬰ニ短調
拍子 4/4拍子
演奏時間 2:10~2:50
難易度 8(上級)
  • 2024年11月20日、記事内容を更新