ドビュッシー 前奏曲集 第1巻の難易度・解説
前奏曲「デルフィの舞姫たち」
前奏曲「帆」
前奏曲「野を渡る風」
前奏曲「夕べの大気にただよう音と香り」
前奏曲「アナカプリの丘」
前奏曲「雪の上の足跡」
前奏曲「西風の見たもの」
前奏曲「亜麻色の髪の乙女」
前奏曲「とだえたセレナード」
前奏曲「沈める寺」
前奏曲「パックの踊り」
前奏曲「ミンストレル」
ドビュッシー 前奏曲集 第2巻の難易度・解説
前奏曲「霧」
前奏曲「枯葉」
前奏曲「ヴィーノの門」
前奏曲「妖精は良い踊り子」
前奏曲「ヒースの荒野」
前奏曲「風変わりなラヴィーヌ将軍」
前奏曲「月の光がふりそそぐテラス」
前奏曲「水の精」
前奏曲「ピックウィック卿を讃えて」
前奏曲「カノープ」
前奏曲「交代する3度」
前奏曲「花火」
ドビュッシー 前奏曲集の楽曲一覧
ドビュッシーは前奏曲を2つの曲集にまとめており、それぞれ12の楽曲が収録されています。
曲には表題が与えられていますが、なぜかこれら表題は、譜面の末尾に示され、他の指示と役割を分けるかのようにカッコ付きで添えられています。「版画」「映像」など過去のドビュッシーの作品では譜面前頭に堂々と表題を示しており、この写譜の変化にはドビュッシーが密かに込めたメッセージが隠されていると考えられています。それは、表題と曲風の不一致による作者の小胆の表れなのか、曲想を押し付けず奏者に自由な想像性を促すためなのか、ドビュッシーの意図するところは明らかにできませんが、残された譜面から生み出される自由な音色には想像性を搔き立てる、印象派音楽ならでは表現がふんだんに散りばめられています。
【前奏曲集 第1巻】
曲名 | 難易度 |
---|---|
前奏曲「デルフィの舞姫たち」 | 5(中級) |
前奏曲「帆」 | 6(中級) |
前奏曲「野を渡る風」 | 7(上級) |
前奏曲「音と香りは夕暮れの大気に漂う」 | 6(中級) |
前奏曲「アナカプリの丘」 | 7(上級) |
前奏曲「雪の上の足跡」 | 5(中級) |
前奏曲「西風の見たもの」 | 8(上級) |
前奏曲「亜麻色の髪の乙女」 | 5(中級) |
前奏曲「とだえたセレナード」 | 7(上級) |
前奏曲「沈める寺」 | 6(中級) |
前奏曲「パックの踊り」 | 7(上級) |
前奏曲「ミンストレル」 | 6(中級) |
【前奏曲集 第2巻】
曲名 | 難易度 |
---|---|
前奏曲「霧」 | 7(上級) |
前奏曲「落葉」 | 6(中級) |
前奏曲「ヴィーノの門」 | 7(上級) |
前奏曲「仙女たちはあでやかな踊り子」 | 7(上級) |
前奏曲「ヒースの荒野」 | 6(中級) |
前奏曲「風変わりなラヴィーヌ将軍」 | 7(上級) |
前奏曲「月の光がふりそそぐテラス」 | 7(上級) |
前奏曲「水の精」 | 7(上級) |
前奏曲「ピックウィック卿を讃えて」 | 7(上級) |
前奏曲「カノープ」 | 6(中級) |
前奏曲「交代する3度」 | 8(上級) |
前奏曲「花火」 | 9(上級) |
※難易度は「G.Henle」の評価を参考にしています。
ドビュッシー 前奏曲集 第1巻の難易度・解説
ドビュッシーの前奏曲第1巻に収録されている楽曲の難易度は「中級~上級」のランクに属しています。
美しく甘美な音色で親しまれている「亜麻色の髪の乙女」は「5(中級)」の難易度に分類されており、前奏曲の中でも比較的挑戦しやすい曲となっています。
前奏曲「デルフィの舞姫たち」
「デルフィ」とはギリシャ神話にて世界の中心を示す特別な場所で、舞姫とはこの地で神事に司る巫女たちを指しています。静寂の中に響く重い音色が神秘的で崇高な雰囲気を漂わせます。
拍子 | 3/4拍子 |
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目安演奏時間 | 2:50~3:50 |
難易度 | 5(中級) |
前奏曲「帆」
冒頭に流れる長3度の音型は風に煽られる帆のはためきを想わせ、重く打ち付けられる低音のリズムは船を動かす波の動きを表現するかのようです。仄暗く不安を思わせる情景が続きますが、中盤には一時明るい晴れ間が差し込みます。
拍子 | 2/4拍子 |
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目安演奏時間 | 2:40~4:30 |
難易度 | 6(中級) |
前奏曲「野を渡る風」
無表情でざわめく風の動きを六連音符の流れで表し、力強い突風の動きを和音の下降音型で描いています。
交互に配置された両者の音型により臨場感のある風の動きを表現しています。
拍子 | 4/4拍子 |
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目安演奏時間 | 2:00~2:30 |
難易度 | 7(上級) |
前奏曲「音と香りは夕暮れの大気に漂う」
憂いの根底を映すような情感、テンポと音色に関する具体的な指示表記を頻繁に置き、細やかな抑揚をつけながらメランコリックな世界観を演出します。
拍子 | 3/4拍子(5/4拍子) |
---|---|
目安演奏時間 | 2:40~3:50 |
難易度 | 6(中級) |
前奏曲「アナカプリの丘」
囁くように響く6音の導入、この動機を反復したあとに快活で溌剌とした楽節が繰り広げられます。タランテラ風のリズムを交えながら、美しく煌めく旋律が颯爽と走り抜けます。
拍子 | 12/16拍子(2/4拍子) |
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目安演奏時間 | 2:50~3:30 |
難易度 | 7(上級) |
前奏曲「雪の上の足跡」
寒々しく物悲しい雪景色、タイでつなぎ留められた鈍い伴奏は、豪雪に足をとられる重い歩みを連想させます。
強弱はp(ピアノ)、pp(ピアニッシモ)、ppp(ピアニッシッシモ)のみで表現され、曲全体が静寂の世界に支配されています。
拍子 | 12/16拍子 |
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目安演奏時間 | 3:00~3:50 |
難易度 | 5(中級) |
前奏曲「西風の見たもの」
嵐を予感させる不気味な導入、吹き荒れる疾風を分散和音で表現し、落雷を想わせるような不協和音を交えながら荒々しい暴風の情景を描きます。
拍子 | 4/4拍子 |
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目安演奏時間 | 2:50~3:30 |
難易度 | 8(上級) |
前奏曲「亜麻色の髪の乙女」
静寂の中で木霊す柔らかな調べ、単音で歌われる甘美な旋律が聴き手の心を和ませます。
中盤、和音の響きで微かな抑揚を与えますが、あくまでも優しく、静穏な世界観を保ちます。
この曲ではルコント・ド・リールの詩をもとに、スコットランドの美しい乙女の肖像を描いています。
拍子 | 3/4拍子 |
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目安演奏時間 | 1:50~2:50 |
難易度 | 5(中級) |
前奏曲「とだえたセレナード」
冒頭、ギターの伴奏を連想させる伴奏が奏され、情熱を秘めたスペイン風の曲想が展開されます。
タイトルに示されたセレナードは後半部に現れますが、冒頭から鳴り響くギター音型がこの歌声を遮り、無情な気分で曲が閉じられます。
拍子 | 3/8拍子 |
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目安演奏時間 | 2:10~2:40 |
難易度 | 7(上級) |
前奏曲「沈める寺」
この曲が描く光景は、古代に沈んだ海中都市の寺院が浮かび上がるというブルターニュの古き伝説から得られたもの、多彩な和音を駆使し、水と寺院を情景とした荘厳で雄大な世界を見事に映し出しています。
ゆったりと上行する和音が雄大に広がる霧の中から聞こえる寺院の鐘を表し、中盤ピアニッシモの指示にて司祭たちの神事の歌声が響き渡ります。
拍子 | 6/4拍子 |
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目安演奏時間 | 5:00~7:00 |
難易度 | 6(中級) |
前奏曲「パックの踊り」
パックとは、シェークスピアの喜劇「真夏の夜の夢」に登場する妖精のこと、
32分音符で緩急をつけた音色、トリラーの上を走り回る分散音、目まぐるしく変化する音型から無邪気に踊るパックの様子が伺えます。
拍子 | 2/4拍子 |
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目安演奏時間 | 2:20~2:50 |
難易度 | 7(上級) |
前奏曲「ミンストレル」
ミンストレルとは顔を黒塗りにした白人が演じる楽団の一座を指します。バンジョーやドラムの音を響かせるミュージックホール風な楽想が展開されます。
拍子 | 2/4拍子 |
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目安演奏時間 | 2:00~2:30 |
難易度 | 6(中級) |
ドビュッシー 前奏曲集 第2巻の難易度・解説
ドビュッシーの前奏曲第2巻の難易度は、第1巻の楽曲よりもやや高めに設定されています。
ほとんどの収録曲が上級ランクに属しており、中でも第12曲の「花火」の演奏難易度は最高ランクの「9(上級)」に分類されています。
前奏曲「霧」
32分音符の連符で奏される分散音がおぼろげな視界を表現しながら霧幻の情景を描きます。
拍子 | 4/8拍子 |
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目安演奏時間 | 2:40~3:20 |
難易度 | 7(上級) |
前奏曲「枯葉」
深く沈む重厚な和音の動きが、落葉と共に広がる寒々しい風景を連想させます。終始メランコリックで退廃的なイメージが付きまとう楽曲です。
拍子 | 3/4拍子 |
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目安演奏時間 | 3:00~3:30 |
難易度 | 6(中級) |
前奏曲「ヴィーノの門」
冒頭ハバネラの動きを提示され、アラビアの雰囲気が漂う妖しげな旋律が奏でられます。
譜面の指示では「激しさ」と「情熱的な高揚」、これら拍車をかける意味で使われる二つの形容を対比させながら演奏することが求められています。この曲想は絵葉書に描かれたアルハンブラ宮殿の門の光景から導かれたと言われています。
拍子 | 2/4拍子 |
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目安演奏時間 | 2:40~4:00 |
難易度 | 7(上級) |
前奏曲「妖精は良い踊り子」
ジェームス・バリー作「ケンジントン公園のピーターパン」の物語の中で踊る妖精たちの様子が描写されていると言われています。冒頭で走り抜ける32分音符の連符はトリルを交えながら変化し、多彩なリズムが交錯します。流麗な旋律からは美しく神秘的な舞いが伺えます。
拍子 | 3/8拍子 |
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目安演奏時間 | 2:40~3:10 |
難易度 | 7(上級) |
前奏曲「ヒースの荒野」
ヒースとは、紫色の花をつけるツツジ科の植物、表題はこのヒースが自生した荒野の光景を指しているものと思われます。懐かしさを覚えるような温かい旋律が響き、優しい風が吹き抜けるような自然の風景が想像できます。
拍子 | 3/4拍子 |
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目安演奏時間 | 2:30~3:00 |
難易度 | 6(中級) |
前奏曲「風変わりなラヴィーヌ将軍」
パリの劇場で演じた道化師の様子が、この表題に添えられたと考えられています。
鋭い緩急を置いたリズムで道化役者らしいおどけた振る舞いを表現しています。
拍子 | 2/4拍子 |
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目安演奏時間 | 2:30~2:50 |
難易度 | 7(上級) |
前奏曲「月の光がふりそそぐテラス」
冒頭、儚い下行音型から始まり薄暗い夜の描写を描きます。和声的な音型が徐々に広がり、ひととき力強く厳粛な和音を響かせます。静寂の雰囲気を纏う神秘的な情景からは、ベルガマスク組曲の「月の光」とは対照的な趣が感じ取れます。
拍子 | 6/8拍子 |
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目安演奏時間 | 3:50~4:30 |
難易度 | 7(上級) |
前奏曲「水の精」
この曲はドイツの詩人ラ・モット・フーケの童話「ウンディーヌ」から曲想を得たと言われています。
幻想的な雰囲気を持ち、上下に揺れ動く滑らかな分散和音と高音部で刻まれる細やかな音型は、水面に広がる波紋としなやかな水の流れを連想させます。
拍子 | 6/8拍子 |
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目安演奏時間 | 2:50~3:40 |
難易度 | 7(上級) |
前奏曲「ピックウィック卿を讃えて」
表題はチャールズ・ディケンズの小説「ピックウィック・ペーパーズ」の主人公を示していると言われています。荘厳な響きから始まり、速度を上げ、温かく、流麗に、そして軽快に、全体を通して多彩な変化を見せます。低音部にはイギリス国家の引用が見られます。
拍子 | 3/4拍子 |
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目安演奏時間 | 2:00~2:30 |
難易度 | 7(上級) |
前奏曲「カノープ」
穏やかな水面を浮き沈みするような音型が、和音、低音部、高音部と形を変えながらゆっくりと奏されます。強弱表現はp(ピアノ)とpp(ピアニッシモ)であしらわれ、哀しく儚げな音色を響かせます。表題のカノープとは、古代エジプトで用いられた骨壺を表しています。
拍子 | 4/4拍子 |
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目安演奏時間 | 2:40~3:50 |
難易度 | 6(中級) |
前奏曲「交代する3度」
全体に3度の音程を張り巡らせ、練習曲風に進行します。情景描写のイメージは捉えにくく前奏曲集の中では異色の雰囲気を持つ作品です。
拍子 | 2/4拍子 |
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目安演奏時間 | 2:40~4:00 |
難易度 | 8(上級) |
前奏曲「花火」
7月14日のパリ祭で打ち上げられる花火の様子を描いた作品、幅広い音域を急速に走る流麗な音色が特徴で、後半部にはフランス国家の断片が引用されています。
拍子 | 4/8拍子 |
---|---|
目安演奏時間 | 3:20~4:20 |
難易度 | 9(上級) |
- 2025年1月6日、記事内容を更新