ショパン ポロネーズの難易度・解説
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22
ポロネーズ 第1番 Op.26-1
ポロネーズ 第2番 Op.26-2
ポロネーズ 第3番 Op.40-1「軍隊」
ポロネーズ 第4番 Op.40-2
ポロネーズ 第5番 Op.44
ポロネーズ 第6番 Op.53「英雄」
ポロネーズ 第7番 Op.61「幻想ポロネーズ」
ショパン ポロネーズの楽曲一覧
ショパンは生涯に複数のポロネーズを作曲しています。
初の作品は1830年~1831年、ショパンが20歳の時に作曲した「アンダンテスピアナートの華麗なる大ポロネーズ」のポロネーズ部分に当たります。この作品はもともとオーケストラとピアノのための曲として作曲されましたが、1836年にピアノ独奏版として再出版されています。
その後、ショパンは7つのポロネーズを発表、作品はワルシャワ音楽院卒業後の20代前半から、晩年の30代後半にかけて作られており、ショパンの音楽性の変化が鮮明に現れています。
特に後期の作品に当たる「英雄」「幻想ポロネーズ」などはスケールが大きく、音楽性・技巧面にともに円熟した様子が伺えます。
※ショパン没後、9つのポロネーズが遺作として発見されていますが、本記事ではのショパン生前中に発表された8つのポロネーズについて解説していきます。
曲名 | 調性 | 作品番号 | 難易度 |
---|---|---|---|
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ | ト長調 変ホ長調 |
Op.22 | 9(上級) |
ポロネーズ 第1番 | 嬰ハ長調 | Op.26-1 | 6(中級) |
ポロネーズ 第2番 | 変ホ短調 | Op.26-2 | 6(中級) |
ポロネーズ 第3番「軍隊」 | イ長調 | Op.40-1 | 5(中級) |
ポロネーズ 第4番 | ハ短調 | Op.40-2 | 6(中級) |
ポロネーズ 第5番 | 嬰ヘ短調 | Op.44 | 7(上級) |
ポロネーズ 第6番「英雄」 | 変イ長調 | Op.53 | 8(上級) |
ポロネーズ 第7番「幻想ポロネーズ」 | 変イ長調 | Op.61 | 8(上級) |
※難易度は「G.Henle」の評価を参考にしています。
ショパン ポロネーズの難易度・解説
ショパンのポロネーズの難易度は中級~上級クラスに分類されます。
第1番~第4番など初期のポロネーズは比較的着手しやすく、有名曲の「軍隊ポロネーズ」も「5(中級)」のランクに属しています。
一方、後期の作品である「英雄」や「幻想ポロネーズ」は「8(上級)」に属しており、激しいオクターブやパッセージ、緻密な装飾など、華麗な演奏を印象づけるための多彩な技巧が求められます。そして後期のポロネーズはどれも長大な楽曲ゆえ、適切な腕の脱力と持久力が必要となります。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22
この曲は「アンダンテスピアナートの楽曲部分」と「ポロネーズの楽曲部分」に分かれています。もともとポロネーズ楽曲部分はピアノとオーケストラのために書かれた作品でしたが、後にピアノ独奏用へと書きかえられ出版されています。
ト長調で始まるアンダンテスピアナート部分は滑らかに流れる16分音符の伴奏の上に、瞬く星のような美しい旋律が響きます。「ピアノ」「ピアニッシモ」による弱音表示が散りばめられ澄みきった静寂の世界が広がります。
そして変ロ長調のポロネーズに移ると世界は一変、力強いファンファーレに始まり勇壮なリズムの中、煌びやかな旋律が華々しく展開されます。華麗で雅な曲想は終始衰えることなく、装飾を加えた主題を反復し、長大なコーダを持って終局を迎えます。
作曲年 | 1830年~1831年 |
---|---|
調性 | ト長調(アンダンテスピアナート部分) 変ホ長調(ポロネーズ部分) |
拍子 | 6/8拍子(アンダンテスピアナート部分) 3/4拍子(ポロネーズ部分) |
演奏時間 | 12:30~15:30 |
難易度 | 9(上級) |
ポロネーズ 第1番 Op.26-1
アレグロ・アパッショナート、3/4拍子、3部形式
4小節の力強い序奏の後、囁くような美しい旋律が響き渡ります。中間部は長調に転調し、陽がさすような温かみを帯びた主旋律が鳴り響き、途中挟まれる左手による対旋律が麗しいエッセンスとなっています。主部の再現後は大きな盛り上がりを見せることなく、途切れるように曲の終りを迎えます。
作曲年 | 1835年 |
---|---|
調性 | 嬰ハ長調 |
拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 7:30~9:30 |
難易度 | 6(中級) |
ポロネーズ 第2番 Op.26-2
マエストーソ、3/4拍子、3部形式
陰鬱で不気味な序奏、主題に入ると力強い和音の連打に始まり、上行のパッセージを経て「フォルティッシッシモ」の音量に到達します。この主題は疑心暗鬼の表情を持つ冷たい一面と、明るくリズミカルな一面を持っています。中間部も行進曲風な曲調で希望を見出すかのような前向きな印象が強く感じられます。
序奏と前半部の主題に見られる、暗く後ろ向きな楽想からこの曲には「シベリア」または「革命」という名前が付いています。
作曲年 | 1834年~1835年 |
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調性 | 変ホ短調 |
拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 7:10~8:40 |
難易度 | 6(中級) |
ポロネーズ 第3番 Op.40-1「軍隊」
アレグロ・コン・ブリオ、3/4拍子、3部形式
第3番ポロネーズは「軍隊ポロネーズ」の名で知られています。
力強く鳴り響く旋律は衰えを知らず勇敢に進行、中間部も勇ましさは健在、活気にあふれた曲調は終始収まることなく、最後は主題を反復して歯切れよく曲を閉じます。
ピアニストのルービンシュタインは「この軍隊ポロネーズはポーランドの偉大さを表している」と評しています。
作曲年 | 1838年 |
---|---|
調性 | イ長調 |
拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 4:10~6:00 |
難易度 | 5(中級) |
ポロネーズ 第4番 Op.40-2
アレグロ・マエストーソ、3/4拍子、3部形式
右手の和音の伴奏に乗って、左手の重々しく絶望感に満ちた旋律が鳴り響きます。
この主題はフォルテにより激情的な高鳴りを見せた後、16分音符で走り抜ける颯爽とした一面を見せます。中間部は明るい曲調で複雑な転調を繰り返し、最後は短縮された主題を再現し朽ちるように終局を迎えます。
第3番の軍隊ポロネーズとは対照的な雰囲気を持っており、ルービンシュタインはこの曲を「ポーランドの没落を表現している」と述べています。
作曲年 | 1838年~1839年 |
---|---|
調性 | ハ短調 |
拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 7:20~8:40 |
難易度 | 6(中級) |
ポロネーズ 第5番 Op.44
モデラート、3/4拍子、4部形式で書かれた極めてスケールの大きい作品
不気味に忍び寄る低音の序奏は、わずか4小節でオクターブに変わり、フォルティッシモに向けた激烈な打鍵から、壮烈な主題が展開されます。まるで暴れ馬に乗ったような恐々とした旋律は一時的に収まり、途中マズルカのリズムを用いた楽想が展開されます。主題とは別世界のような安寧の情景が広がり、束の間の安らぎが訪れます。そして強烈なパッセージと共に序奏と主題が舞い戻り、長大なコーダを経て最後は華々しい和音で曲を締めくくります。
リストはこの作品をショパンの最高傑作の一つであると評しています。
作曲年 | 1840年~1841年 |
---|---|
調性 | 嬰ヘ短調 |
拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 10:20~11:20 |
難易度 | 7(上級) |
ポロネーズ 第6番 Op.53「英雄」
マエストーソ、3/4拍子、3部形式
「英雄」と称されるこのポロネーズは、豪華絢爛という言葉が最も相応しい楽曲と言えます。長い序章に始まり、活気に満ちた力強い主題が展開、厚みのある和音と豪勢なパッセージ、華麗な装飾が一面に施されています。そして中間部は、絶えず繰り返されるオクターブの伴奏の上に行進曲調の勇壮な旋律が響きます。スケールの大きなこの曲には当然のごとく壮大なコーダが待ち受けており、力強く堂々と曲を締めくくります。
作曲年 | 1842年 |
---|---|
調性 | 変イ長調 |
拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 6:10~7:30 |
難易度 | 8(上級) |
ポロネーズ 第7番 Op.61「幻想ポロネーズ」
アレグロ・マエストーソ、3/4拍子、
この第7番はショパンが晩年に作曲した最後のポロネーズで、4つの主題が形を変えて展開する自由な形式で書かれています。それぞれの主題が幻想的かつ瞑想的に表現され、心に染みる感傷的な旋律が印象的です。
この曲から滲み出る悲壮感には、ショパンの孤独の気持ちが映し出されていると言われています。作曲時期の1845年~1846年はショパンの健康状態も悪く、恋人ジョルジュサンドとの関係と険悪な状況にあったと言われています。
作曲年 | 1845年~1846年 |
---|---|
調性 | 変イ長調 |
拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 11:30~13:30 |
難易度 | 8(上級) |
- 2024年9月3日、記事内容を更新