バッハ 2声のインヴェンションの楽曲一覧

2声のインヴェンションは異なる調性の15曲で構成されます。
バッハが教育用の譜面として書き上げたもので、弟子たちに「多声音楽の奏法」と「作曲のための音楽理論」を習熟させる目的で誕生したと考えられています。
2声のインヴェンションの後続に作曲された3声のシンフォニアと共に、現代でも鍵盤楽器の学習用の楽曲として広く扱われています。

曲名	調性	作品番号	難易度
インヴェンション 第1番	ハ長調	BWV.772	3（初級）
インヴェンション 第2番	ハ短調	BWV.773	4（中級）
インヴェンション 第3番	ニ長調	BWV.774	4（中級）
インヴェンション 第4番	ニ短調	BWV.775	3（初級）
インヴェンション 第5番	変ホ長調	BWV.776	4（中級）
インヴェンション 第6番	ホ長調	BWV.777	3（初級）
インヴェンション 第7番	ホ短調	BWV.778	4（中級）
インヴェンション 第8番	ヘ長調	BWV.779	4（中級）
インヴェンション 第9番	ヘ短調	BWV.780	4（中級）
インヴェンション 第10番	ト長調	BWV.781	4（中級）
インヴェンション 第11番	ト短調	BWV.782	4（中級）
インヴェンション 第12番	イ長調	BWV.783	4（中級）
インヴェンション 第13番	イ短調	BWV.784	4（中級）
インヴェンション 第14番	変ロ長調	BWV.785	4（中級）
インヴェンション 第15番	ロ短調	BWV.786	4（中級）

※1：難易度は「G.Henle」の評価を参考にしています。

バッハ 2声のインヴェンションの難易度・解説

バッハのインヴェンションは初心者～中級者向けの楽譜として作られており、演奏難易度は「3（初級）～4（中級）」のランクに分類されています。
譜面の内容も高度な技巧は必要とせず、規則正しく形式的な音型で組み立てられているため、比較的着手しやすい楽曲となっています。

インヴェンション 第1番 BWV.772

アレグロ、4/4拍子
明るく前向きな主題が特徴、この主題の対位と拡大の音型で全体が構成されます。

インヴェンション 第2番 BWV.773

モデラート、4/4拍子
インヴェンションの曲集の中で唯一のカノン。右手で奏されたメランコリックな旋律を左手が追いかけるように進行します。

インヴェンション 第3番 BWV.774

アレグレット、3/8拍子
心地よい牧歌的な音色が鳴り響きます。3部形式で構成され、末尾には短いコーダが添えられます。

インヴェンション 第4番 BWV.775

アレグロ、3/8拍子
減7度を挟む上行・下行の音型を元に全体が構成されます。不安げに響く音色の後ろに微かな躍動感が感じられます。

インヴェンション 第5番 BWV.776

アレグレット・エスプレッシーヴォ、4/4拍子
冒頭に見られる装飾音を重ねた主題を左右に移しながら展開されます。対する伴奏は16分音符が連なり絶え間なく主題の音型を支えます。

インヴェンション 第6番 BWV.777

アレグレット、3/8拍子
休符を挟んで左手が先行する主題の音色は、切なさと愛らしさを持ち合わせています。左右の音型が対称的で対話的な流れが特徴です。

インヴェンション 第7番 BWV.778

アンダンテ・コン・モート、4/4拍子
冒頭に見られる右手の音型が主題となり全体が構成されます。高音部の物悲しい旋律は装飾音により悲哀感を強めながら進行します。

インヴェンション 第8番 BWV.779

ヴィヴァーチェ、3/4拍子
明朗で活き活きとした楽曲、冒頭8分音符の音型が左右交互に現れ競い合うように進行、中間部で音型を拡張しながら伸びのある音色を奏でます。

インヴェンション 第9番 BWV.780

アンダンテ・コン・エスプレッシオーネ、3/4拍子
冒頭4小節の上声部の主題を元に、悲しみに満ちた音色が鳴り響きます。

インヴェンション 第10番 BWV.781

アレグロ・ピアチェーヴォレ、9/8拍子
晴れ晴れとした明朗な楽曲、冒頭の分散和音の主題を両声部で模倣しながら進行します。
一拍目に散りばめられたプラムトリラーとモルデントは、後半部で長いトリルに変化します。

インヴェンション 第11番 BWV.782

モデラート、4/4拍子
沈み込むような16分音符の主題が対位句と共に重々しく鳴り響きます。対位句は下行する半音階のから始まり反行型へと移り変わります。

インヴェンション 第12番 BWV.783

ヴィヴァーチェ、12/8拍子
8分音符を挟み反復されるモルデントによる主題が、左右で模倣されながら進行します。響き渡る音色は優美さと共に前向きなバイタリティを感じさせます。

インヴェンション 第13番 BWV.784

アレグロ、4/4拍子
分散和音で形づくる滑らかな動きが印象的、冒頭16分音符の音型を左右で模倣しながら柔かく神秘的な響きをもたらします。

インヴェンション 第14番 BWV.785

アンダンテ・コン・モート、4/4拍子
16分音符と32分音符を組み合わせた主題を元に、左右で模倣した音型が並びます。
軽やかでチャーミングな雰囲気を感じさせますが、後半はカノンの音型に移り変わり臨場感を持って曲を閉じます。

インヴェンション 第15番 BWV.786

アレグロ・コモド、4/4拍子
カプリッチョ風な主題を持つ2声のフーガ、短い楽曲ながらも厳かな響きが印象的。

• 2024年12月26日、記事内容を更新