ショパン ピアノソナタ一覧
ショパンは生涯に3つのピアノソナタを作曲しています。
ピアノソナタ第2番と第3番はショパンがマジョルカ島の療養後、ノアーンのジョルジュサンド邸で執筆した楽曲、これらはショパンの円熟期に手掛けられた最も長大なピアノ独奏曲にあたり、大作曲家の偉大な作品として、現代でも多くの演奏家に愛されています。
第1番も他のソナタ同様に全4楽章で構成、これはショパン青年期の作品であり、華やかさ・優美さ・構成の点でまだまだ発展途上であるという意見もあり、演奏される機会が極端に少ない楽曲となっていますが、第3楽章の旋律など所々に、円熟期のショパン作品を予見させるような麗しく情緒溢れる表現が見られます。
曲名 | 調性 | 作品番号 | 難易度 |
---|---|---|---|
ピアノソナタ 第1番 | ハ短調 | Op.4 | 8(上級) |
ピアノソナタ 第2番「葬送」 | 変ロ短調 | Op.35 | 9(上級) |
ピアノソナタ 第3番 | ロ短調 | Op.58 | 9(上級) |
※1:難易度は「G.Henle」の評価を参考にしています。
※2:上記一覧表の調性は、第1楽章の調性を記載しています。
ショパン ピアノソナタの難易度・解説
ショパンが作曲した3つのピアノソナタの演奏難易度はすべて「上級」のランクに属しています。
1837年以降、ショパンの成熟期に作曲されたピアノソナタ第2番「葬送」とピアノソナタ第3番は最高難度の「9(上級)」に設定されています。
また全楽章通しての難易度ではなく、ピアノソナタ第2番 第3楽章「葬送行進曲」単独での難易度は「4(中級)」に分類されています。
ピアノソナタ 第1番 Op.4
- 第1楽章:アレグロ・マエストーソ、気怠く虚無感が纏わりつく第1主題が特徴、第2主題は陰りを拭い去るかのよう、わずかに光を帯びた旋律が奏されますが、後続の展開部・再現部では気鬱な第1主題の変形がメインとして扱われます。
- 第2楽章:アレグレット、悦びの表情を伺わせる明るい旋律がリズミカルに奏されます。トリオは冷たい風を纏うような物寂しい情感を引き出し、後にオクターブで駆け上がる躍動的な音型に発展します。
- 第3楽章:ラルゲット、5/4拍子という珍しい拍子で書かれた楽曲、長閑な情景美に満たされており、静寂の中ショパンらしい上品で繊細な旋律がしっとりと奏でられます。
- 第4楽章:プレスト、コン・フオーコの指示で怒涛の如く、力のこもった旋律が奏されます。fz(フォルツァンド)をはじめ、強調表現を多用しながら燃え盛るような高揚が度々現れます。曲全体に前進的な勇ましさが感じられる作品です。
作曲年 | 1827年~1828年 |
---|---|
調性 | ハ短調(第1楽章) 変ホ長調(第2楽章) 変イ長調(第3楽章) ハ短調(第4楽章) |
拍子 | 2/2拍子(第1楽章) 3/4拍子(第2楽章) 5/4拍子(第3楽章) 2/2拍子(第4楽章) |
難易度 | 8(上級) |
ピアノソナタ 第2番 Op.35「葬送」
- 第1楽章:グラーヴェ、失意の底に叩き落とすような重い導入、そして悶え苦しむような第1主題が続きます。落ち着きあるコラール風の第2主題が緊張を和らげますが、差し迫った情緒と焦燥感は拭えず、曲全体が不安と緊迫の感情で満たされています。
- 第2楽章:スケルツォ、第一楽章で見せた恐怖心を掻き立てるような動的な主題から始まりますが、中間部は一変、心を洗い流すような甘美な旋律が響き渡ります。この音色は末尾のコーダにも添えられ、ゆっくりと葬送行進曲に繋ぎます。
- 第3楽章:マーチ・フェネブレ、「葬送行進曲」の表題を持つ楽曲、重い足取りで進む低音の響きが、気怠く焦燥感に満ちた心情を表現しています。中間部は救いの手を差し伸べるように慰めの旋律が奏でられます。主部の情感を再現し、最後は遠ざかる鐘の音のように曲を閉じます。
- 第4楽章:プレスト、不気味な趣で繰り返される3連符のユニゾン、終始同じ音型がうねる様に流れ、最後は叩きつけるような和音で終止符を打ちます。
作曲年 | 1837年~1839年 |
---|---|
調性 | 変ロ短調(第1楽章) 変ホ短調(第2楽章) 変ロ短調(第3楽章) 変ロ短調(第4楽章) |
拍子 | 2/2拍子(第1楽章) 3/4拍子(第2楽章) 4/4拍子(第3楽章) 2/2拍子(第4楽章) |
難易度 | 9(上級) ※第3楽章「葬送行進曲」単独の難易度は4(中級) |
ピアノソナタ 第3番 Op.58
- 第1楽章:アレグロ・マエストーソ、堂々と風格を持って始まる第1主題は行進曲風な動きで奏され、後に麗しく表情豊かな第2主題に変化します。ピアノソナタの中でも特に長大なこの楽章は、優雅な性格を保ちながらも、華麗で煌びやかな表現がふんだんに詰め込められています。
- 第2楽章:スケルツォ モルト・ヴィヴァーチェ、軽快な動きを伴うフレーズは忙しく駆け巡り、一段落した後、美しい響きをもたらすコラール風の中間部に身を委ねます。
- 第3楽章:ラルゴ、猛々しく響く序奏は、重圧に満ちた壮絶な展開を想像させますが、予想に反し甘美で夢想的な旋律に発展します。この旋律は転調を重ねながらも、浄化的な世界観を失うことなく、ゆっくり静寂の中に溶け込むように奏でられます。
- 第4楽章:プレスト・ノン・タント、力強い和音の導入から始まり、華麗かつ情熱的な旋律がドラマティックに展開されます。最後は繊細なパッセージが輝くコーダを添え、堂々と楽曲を締めくくります。
作曲年 | 1844年 |
---|---|
調性 | ロ短調(第1楽章) 変ホ長調(第2楽章) ロ長調(第3楽章) ロ短調(第4楽章) |
拍子 | 4/4拍子(第1楽章) 3/4拍子(第2楽章) 4/4拍子(第3楽章) 6/8拍子(第4楽章) |
難易度 | 9(上級) |
- 2025年4月23日、記事内容を更新