ラフマニノフ「楽興の時 Op.16」の難易度・解説
楽興の時 第1番 Op.16-1
楽興の時 第2番 Op.16-2
楽興の時 第3番 Op.16-3
楽興の時 第4番 Op.16-4
楽興の時 第5番 Op.16-5
楽興の時 第6番 Op.16-6
ラフマニノフ「楽興の時 Op.16」の楽曲一覧
「楽興の時 Op.16」は全6曲で構成、この作品は1896年に作曲されており、この年はラフマニノフが23歳の年に当たります。
1897年、ラフマニノフが交響曲第1番初演の失敗により、重度の精神疾患に陥ったというエピソードは有名です。この「楽興の時」はその失意のどん底に陥る直前に手掛けられた最後の作品と言われています。若さゆえの荒々しさを持ち合わせながらも、壮年期の作品を彷彿させる抒情感と感傷的表現が垣間見えます。
曲名 | 調性 | 作品番号 | 難易度 |
---|---|---|---|
楽興の時 第1番 | 変ロ短調 | Op.16-1 | 6(中級) |
楽興の時 第2番 | 変ホ短調 | Op.16-2 | 8(上級) |
楽興の時 第3番 | ロ短調 | Op.16-3 | 4(中級) |
楽興の時 第4番 | ホ短調 | Op.16-4 | 8(上級) |
楽興の時 第5番 | 変ニ長調 | Op.16-5 | 4(中級) |
楽興の時 第6番 | ハ長調 | Op.16-6 | 7(上級) |
※難易度は「G.Henle」の評価を参考にしています。
ラフマニノフ「楽興の時 Op.16」の難易度・解説
ラフマニノフ 楽興の時の難易度は、中級~上級のランクに分類されます。
高速なパッセージやフォルティッシモによるダイナミックな表現が求められる「第2番Op.16-2」や「第4番Op.16-4」は「8(上級)」の高い難易度に属しています。一方「第3番 Op.16-3」「第5番 Op.16-5」などはテンポも緩やかで、上級者向けの技巧も見られないため「4(中級)」のランクに該当、3連音符などのリズムや基本的な強弱表現が処理できれば難なく弾きこなすことができるでしょう。
楽興の時 第1番 Op.16-1
アンダンティーノ、4/4拍子
エレジーのような作風で、悲しみ切なさが滲み出る旋律が鳴り響きます。
中間部は拍子を変えながら、3連符による柔らかな旋律が奏でられます。その後、流麗で高速なパッセージにより神秘的な世界観が展開され、その旋律は一時劇的な高鳴りを見せます。
悲しい主題の旋律を再現した後は、音色はゆっくりと低音に下降し、包み込むような和音の響きで曲を閉じます。
調性 | 変ロ短調 |
---|---|
拍子 | 4/4拍子 |
演奏時間 | 8:00~9:00 |
難易度 | 6(中級) |
楽興の時 第2番 Op.16-2
アレグレット、2/4拍子
冷たく不気味に反響する旋律。16部音符を主とした不規則な伴奏がうねる様に流れます。
中間部はより劇的に感情が高まり、阿鼻叫喚の情景が想像されます。冷徹な主題を再現しピアニッシモの中、朽ち果てるように終止符を打ちます。
調性 | 変ホ短調 |
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拍子 | 2/4拍子 |
演奏時間 | 2:50~3:30 |
難易度 | 8(上級) |
楽興の時 第3番 Op.16-3
アンダンテ・カンタービレ、4/4拍子
悲しみに溢れた深く重い旋律が、厚みある和音の上で歌われます。
中間部に入ると、3/4拍子のリズムに変わり、葬送行進曲風な重い足取りで進行します。
終始悲哀の情感が付きまとう切ない楽曲です。
調性 | ロ短調 |
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拍子 | 4/4拍子 |
演奏時間 | 6:20~8:30 |
難易度 | 4(中級) |
楽興の時 第4番 Op.16-4
プレスト、4/4拍子
情熱的でエネルギッシュな楽想、絶え間なく疾走する16分音符の伴奏が特徴、
主題の旋律は渦巻くような高速なパッセージに変わり、徐々に臨場感が増します。
中間部にて一旦フォルティッシッシモのクライマックスを迎え、再現部はより力強く迫力ある轟音を掻き鳴らします、そして最後は下降音階で燃え尽きるように終焉を迎えます。
調性 | ホ短調 |
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拍子 | 4/4拍子 |
演奏時間 | 2:30~3:30 |
難易度 | 8(上級) |
楽興の時 第5番 Op.16-5
アダージョ・ソステヌート、4/4拍子
楽興の時の中で最も大らかで温かみのある楽曲、3連符のリズムでゆったり流れる旋律は希望と自信に満ちています。バルカローレ風の雰囲気を備え、船出の情景が目に浮かぶようです。
調性 | 変ニ長調 |
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拍子 | 4/4拍子 |
演奏時間 | 4:40~5:50 |
難易度 | 4(中級) |
楽興の時 第6番 Op.16-6
マエストーソ、3/4拍子
最終楽曲に相応しい堂々と風格のある楽曲、フォルティッシモによるエネルギッシュな演奏から始まり、32分音符が連なる豪華な音色が途切れることなく続きます。
中間部は高音の旋律を美しく響かせ、上行の装飾音により一層華麗な演出を加えます。フォルテの強調表現は再現部には最高潮に達し、最終音はffff(フォルテフォルティッシモ)による渾身の打鍵で曲を締めくくります。
調性 | ハ長調 |
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拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 4:00~6:00 |
難易度 | 7(上級) |
- 2024年9月12日、記事内容を更新