シューマン 幻想小曲集 Op.12の難易度・解説
幻想小曲集 第1曲「夕べに」
幻想小曲集 第2曲「飛翔」
幻想小曲集 第3曲「なぜに」
幻想小曲集 第4曲「気まぐれ」
幻想小曲集 第5曲「夜に」
幻想小曲集 第6曲「寓話」
幻想小曲集 第7曲「夢のもつれ」
幻想小曲集 第8曲「歌の終わり」
シューマン 幻想小曲集 Op.12の楽曲一覧
シューマンは「幻想小曲集」という名の作品を生涯に複数作曲しています。
以下に示すのは1837年に完成されたピアノのための作品Op.12となります。
全8曲で構成され、それぞれに詩的なタイトルが添えられています。
どの曲も個性的で幻想感溢れる名作、中にはシューマンとクララの愛の物語を秘めた作品もあり、ロマンティックな表現が散りばめられた曲集となっています。
曲名 | 調性 | 作品番号 | 難易度 |
---|---|---|---|
幻想小曲集 第1曲「夕べに」 | 変ニ長調 | Op.12-1 | 5(中級) |
幻想小曲集 第2曲「飛翔」 | ヘ短調 | Op.12-2 | 7(上級) |
幻想小曲集 第3曲「なぜに」 | 変ニ長調 | Op.12-3 | 6(中級) |
幻想小曲集 第4曲「気まぐれ」 | 変ニ長調 | Op.12-4 | 6(中級) |
幻想小曲集 第5曲「夜に」 | ヘ短調 | Op.12-5 | 7(上級) |
幻想小曲集 第6曲「寓話」 | ハ長調 | Op.12-6 | 7(上級) |
幻想小曲集 第7曲「夢のもつれ」 | ヘ長調 | Op.12-7 | 6(中級) |
幻想小曲集 第8曲「歌の終わり」 | ヘ長調 | Op.12-8 | 6(中級) |
※難易度は「G.Henle」の評価を参考にしています。
シューマン 幻想小曲集 O.12の難易度・解説
シューマンの「幻想小曲集 Op.12」に収録されている8曲は「5(中級)~7(上級)」の難易度に分類されており、人気曲の「飛翔」は曲集の最難関レベル「7(上級)」に位置しています。フォルテ、スフォルツァンドで響くダイナミックな主題が印象的な曲ですが、ピアノで小刻みに響く流麗な旋律も含めこの曲の魅力となっています。力強い打鍵と、忙しく駆け回るこれらの音色を正確に弾き分ける技術が求められます。
幻想小曲集 第1曲「夕べに」
コン・モルト・センチメント(非常に心を込めて)、2/8拍子
温かみのある旋律が3連符の伴奏に乗って幻想的に響きます。途中転調するもリズムを変えることなく終始穏やかな表情で曲が進行します。全体的に落ち着きがあり、ゆっくりと沈みゆく静かな夕暮れが想像できます。
調性 | 変ニ長調 |
---|---|
拍子 | 2/8拍子 |
演奏時間 | 3:20~4:20 |
難易度 | 5(中級) |
幻想小曲集 第2曲「飛翔」
モルト・ヴィーヴォ(極めて急速に)、6/8拍子、ABACAのロンド形式
力強く羽ばたくような主題、冒頭で一度耳にしただけで表題の意を容易に汲み取ることができます。
「飛翔」を連想させる開放的なAの主題は、BとCの題材で羽を休め、最終的に大きく舞い上がります。
調性 | ヘ短調 |
---|---|
拍子 | 6/8拍子 |
演奏時間 | 3:10~4:00 |
難易度 | 7(上級) |
幻想小曲集 第3曲「なぜに」
レント・エ・テネラメンテ(ゆっくりと繊細に)、2/4拍子
切なく哀しみの気持ちが漏れ出すような旋律、この切ない曲には、結婚を望むシューマンとクララ、そして結婚に難色を示すクララの父親の物語が秘められていると言われています。
哀愁溢れる旋律は終始途切れることなく響き、やりきれない思いを抱き、最後は後ずさるように曲を閉じます。
調性 | 変ニ長調 |
---|---|
拍子 | 2/4拍子 |
演奏時間 | 2:20~3:20 |
難易度 | 6(中級) |
幻想小曲集 第4曲「気まぐれ」
コン・ウモーレ(ユーモアをもって)、3/4拍子、3部形式
冒頭は勇ましい和音に始まり、少しずつ軽快な表情を見せます。中間部はややコラール風に歌い、主部に戻ります。様々な曲調が入り混じる構成に「気まぐれ」というタイトルの意図が感じ取れます。
調性 | 変ニ長調 |
---|---|
拍子 | 3/4拍子 |
演奏時間 | 3:10~4:00 |
難易度 | 6(中級) |
幻想小曲集 第5曲「夜に」
アパッショナート(情熱的に)、2/4拍子
冒頭から妖艶に鳴り響く16分音符の旋律が終始続きます。悪夢を見るかのような焦燥感に満ちた楽曲。
中間部には一時的な安息が設けられますが、平穏も束の間、荒れ狂う嵐のようなパッセージを経て元の主題に引き戻されます。
調性 | ヘ短調 |
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拍子 | 2/4拍子 |
演奏時間 | 4:00~4:40 |
難易度 | 7(上級) |
幻想小曲集 第6曲「寓話」
レント(ゆっくりと)、2/4拍子、3部形式
冒頭に響く滑らかな旋律から、スタッカートで打ち鳴らす急速な変化を経て、中間部は上下するドラマティックなパッセージが展開されます。
調性 | イ長調 |
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拍子 | 2/4拍子 |
演奏時間 | 2:50~3:40 |
難易度 | 7(上級) |
幻想小曲集 第7曲「夢のもつれ」
ヴィヴァーチッシモ(最も活発に)、2/4拍子
軽快に駆け回る16分音符の主題、練習曲的要素が強く、4指5指が度々交錯する音符の並びは想像以上に難解で、演奏者から「指のもつれ」というユーモアを込めた新たな表題が囁かれるほど困難なものです。
調性 | ヘ長調 |
---|---|
拍子 | 2/4拍子 |
演奏時間 | 2:30~3:00 |
難易度 | 6(中級) |
幻想小曲集 第8曲「歌の終わり」
コン・ブオン・ウモーレ(適度なユーモアを持って)、4/4拍子
冒頭から中間部を含め、祝祭を想わせる賑やかで前向きな曲調が展開されます。
しかしコーダの曲調は一変、自信を失ったかのような控えめな音色で消えるように曲を閉じます。
シューマンは、この曲に対して「全体が婚礼の鐘の響きで溢れているが、最後には葬送の鐘が混じっている」と言葉を残しています。
調性 | ヘ長調 |
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拍子 | 4/4拍子 |
演奏時間 | 5:00~6:00 |
難易度 | 6(中級) |
- 2024年9月3日、記事内容を更新